ヤマガミ「農之蔵」の農業

醤油と味噌。
その原料を、一から自分たちで育むことに
誇りを持って毎日汗を流しています。

いつか自分で原料から栽培し作ってみたい

現代は飽食の時代と言われています。その中で存在感を増す食べ物の役割。私たちの作っているのは毎日食べる醤油や味噌。だからこそ身体にいいものを、安心できるものを追求して参りました。
昭和の頃、推奨された外国産の大豆。浸水すると黒い泡が出て、驚きました。気持ちの良いものではありません、遠い海外からやって来た原料はあまりにも生産現場 が見えない。いつか自分で原料から栽培し作ってみたいと永年願っておりました。
元々はさつま芋をでんぷんにする加工場も営んでいるため、6次産業化の呼びかけを聞き、さつま芋の栽培を始めました。さらに「今こそ原料から育む時」と醤油・味噌の原料となる大麦と大豆栽培にもトライ。大豆はフクユタカ、大麦は二条はるかを厳選。

「さあ、夏がきたぞ、みんな大きくなろう」

大豆畑の作業はお天道様とにらめっこの毎日。有機堆肥をたっぷり漉き込んだ畑に梅雨明けを待って種まきをします。種まき直後の梅雨の豪雨は大豆の発芽率も下げてしまうので試行錯誤の連続。種まきはカラリと晴れてから。発芽して2週間で土寄せです。せっかく育ってきた苗が倒れないように、更に雑草予防にもなるのです。南国鹿児島の梅雨明けは、暑さも猛烈です。流れる汗に近隣の山風が心地良く、毎年「さあ、夏がきたぞ、みんな大きくなろう」と大豆たちを励ましています。この時期、さつま芋の草刈りなどもあり、夜明けからの作業です。あちらの畑、こちらの畑と、町内に点在する畑の世話に回ります。

秋の日を浴びて、自然に艶やかな一粒の実り

秋の鱗雲が見え始めたら、大豆の収穫です。コンバインで刈り取り、その後乾燥させます。大地の栄養がぎっしり詰まった大豆は美味しさも一際ぎっしり。秋の日を浴びて、自然に艶やかな一粒の実りとなるのです。
秋から冬にかけて、畑はさつま芋の収穫作業と苗づくり、加えて11月からは麦の植え付けと繁忙期をむかえます。麦も雨や湿度が苦手です。秋雨前線が停滞すると、種まきを延長することも。そして小麦が小さいうちに、3月頃、上からローラーで踏みつけてやります。いわゆる俳句の季語にもある麦踏ですね。麦踏で刺激を受けた若い麦はエチレンという植物ホルモンをつくります。茎を太くし、根張りを良くするホルモンです。同時に伸びすぎも抑えるので、麦畑はきれいに波打っているように見えるのです。春、すべての株が黄金色に輝くために、麦たちを子どものように手をかけて、世話しています。
日本の食の根幹となる調味料である醤油・味噌。その原料を一から自分たちで育むことに誇りを持って毎日汗を流しています。